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Geminiが8割でChatGPTを抜いた調査。前回は半年前ではなかった

みなづちです。
2026年8月7日、Impress Watchが調査結果を公開しました。見出しは「8割がGemini利用、ChatGPTは68% AI利用調査」です。
数字はこうなっています。
Gemini 80.4% / ChatGPT 68.2% / Claude 52.7%
ChatGPTがGeminiに抜かれた。日本のニュースまとめサイトが次々に転載し、週末のあいだに広がりました。
私も最初は「そうなのか」と思いました。ところが記事を開いて、そのまま止まりました。
回答は639件です。そして本文にはこう書かれています。
半年前に実施した前回のAIサービス利用調査では、ChatGPTが最も多かったですが、今回はGeminiが首位となりました。
この「半年前」を確かめにいったところ、前回調査は約1年半前でした。しかもその根拠は、Impress自身がこの段落の直後に貼っているリンクの中にあります。
本記事では、以下のポイントから解説します。
- 「半年前」が誤りだと分かる証拠が、記事の中に同居していること
- 調査が5日間のGoogleフォームで、回答が639件だったこと
- 設問文が本文になく、グラフ画像の中にしかなかったこと
- 前回との比較が、選択肢の作りの違いで成立しないこと
- 他社の調査と並べたとき、ずれているのがどのサービスだったか
結論:「8割がGemini」は639件の回答で、前回は1年半前だった

まず記事全体の結論からお伝えします。押さえておきたいのは、この数字が日本の利用率ではなく、5日間に集まった639件の回答の内訳だという点です。
調査の実体を先に並べます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 実施 | 2026年7月31日10時〜8月4日(5日間) |
| 方法 | 記事に掲載されたGoogleフォームへの自主回答 |
| 回答 | 639件 |
| 調査名 | AIサービスの利用状況について (Impress Watch読者アンケート) |
| 公開 | 2026年8月7日10時 |
調査名には「Impress Watch読者アンケート」と入っています。これはGoogleフォーム本体のタイトルであり、募集記事にもそのまま書かれています。
ところが結果記事は、この括弧の部分を落として「AIサービスの利用状況について」と表記しました。結果記事のHTML全体を走査すると、「読者」という語が1回も出てきません。「偏」も「母集団」も0回です。
そしてもう1つ。本文の「半年前」は誤りです。前回調査は2025年1月末に実施され、2025年2月14日11時45分に公開されました。実施日から数えて546日、約17.9か月前にあたります。
ここが本記事でいちばん重い部分です。その反証は、記事の中に同居しています。「半年前」と書いた段落の直後に、Impress自身が前回調査へのリンクカードを置いており、そこに表示されている日付が「2025年2月14日 11:45」なのです。
筆者の視点:逸脱だと書こうとして、通常運用だと分かった

この件を追う中で、見立てが二度変わりました。ここではその過程を書きます。
最初は「今回だけ読者限定を外した」と書くつもりだった
募集記事には「Impress Watch読者アンケート」とあるのに、結果記事から「読者」が消えている。これを見つけたとき、今回だけ限定を外したのだろうと考えました。
しかも同社は他のアンケート記事の見出しに「読者調査」と付けています。2026年2月24日の「NISAの利用率は93.3% 「上限」積立も多い 読者調査」がそれです。
比較すれば逸脱が浮かぶ。そう思って確かめにいきました。
結果記事21本を数えたら、逆だった
アンケートコーナーの記事を全年分たどり、掲載されている全21本を個別に取得して見出しを逐語で並べました。
結果記事10本のうち、見出しに「読者調査」が付いているのはNISAの1本だけでした。
音楽サブスク、電子書籍、動画配信、スマホの容量、身だしなみ家電、スマートウォッチ。どれも付いていません。付けるほうが例外で、10本中1本です。
決定的だったのは、前回のAI調査です。2025年2月14日の記事の見出しは「ChatGPT利用は54%、Geminiは42% AIサービス利用調査結果発表」で、こちらにも読者限定はありません。本文の「読者」も0回でした。
今回と前回は同じ扱いでした。私が逸脱に仕立てようとしていたわけです。
崩れなかったほうが、記事の軸になった
「逸脱」は書けなくなりました。ただし、崩そうとして崩れなかったものが残りました。
「半年前」の誤りです。こちらは7つの経路から崩しにいって、すべて塞がりました。
そして崩れなかった理由のほうが重い。間隔が半年なら「最近の急変」に見えますが、1年半なら「じわじわ動いた」話になります。読者が受け取る速度の印象が変わります。
調査の実体は5日間・Googleフォーム・639件の回答

調査そのものの作りを確認します。ここが数字の読み方を決めます。
募集記事は7月31日、回答期限は8月4日
募集記事は2026年7月31日10時に公開されました。独立した1本の記事で、本文にはこう書かれています。
今後の記事制作やサービス開発の参考とするため、皆様のAIサービス利用状況をお教えいただけないでしょうか。
そしてリンク先がGoogleフォームです。記事には次の条件が並びます。
・回答期限:2026年8月4日
・所要時間:約1~2分
実質5日間の調査です。回答は自主的なもので、記事を見た人が自分で手を挙げた形になります。
「639件の回答」であって「639人」ではない
結果記事の冒頭は次のとおりです。
7月末から実施した「AIサービスの利用状況について」のアンケートでは、639件の回答が寄せられました。
逐語は「639件の回答」です。「639人」とは書かれていません。1人1回答であることを担保する記述もありません。
細かいようですが、転載先の記事には「回答者639人のうち」と書き換えているものがあります。原文にない断定です。本記事では「639件」と書きます。
回答したのは男性62.2%・ガジェット好きの層
回答者の属性は、結果記事にも図版にも載っていません。年齢も性別も職業も書かれていない。
手がかりは媒体の側にあります。Impress Watchが公開している媒体資料によれば、読者は男性が62.2%、世帯年収700万円以上が34.6%を占めます。趣味の項目では「ガジェット」が38.9%、「プログラミング」が14.2%です。
つまりデジタル機器への関心が高い層が母体になります。そこへさらに、5日間のあいだにアンケートの告知記事を読み、1〜2分かけて自分で回答した人だけが残ります。
絞り込みが何段も直列にかかっている、という理解が要ります。
639件でも標本誤差は計算できない
n=639という数字を見ると、誤差はどれくらいかと考えたくなります。実際、単純な計算をすれば±3ポイント程度という値が出ます。
ただし、この調査でその計算をしてはいけません。
標本誤差の式は、母集団の全員が既知の確率で選ばれる、という前提から導かれています。今回は回答者が自ら手を挙げているため、選ばれる確率が定義できません。式の前提が成立していないのです。
誤差を書けば、読者に「真の値は77%から83%の間にある」という保証を与えることになります。その保証は成り立ちません。回答者を増やしても縮まない偏りが、誤差の大部分を占めます。
「半年前」は誤り。前回調査は2025年2月14日公開だった

ここが本記事の中心です。順に確認します。
「半年前」の反証が同じ記事の中にある
本文の逐語を、もう一度置きます。
半年前に実施した前回のAIサービス利用調査では、ChatGPTが最も多かったですが、今回はGeminiが首位となりました。利用されるサービスの傾向が変化していることがうかがえます。
この直後に、Impress編集部が貼ったリンクカードがあります。
ChatGPT利用は54%、Geminiは42% AIサービス利用調査結果発表
2025年2月14日 11:45
本文が「半年前」と書き、その2行下に「2025年2月14日」と表示されています。参照先は記事自身が特定しているので、探しにいく必要すらありません。
前回の実施は2025年1月末だった
前回記事の本文にも記載があります。
1月末から実施した「AIサービス利用について」のアンケートの回答数は、263件となりました。
前回の募集記事の公開日時は2025年1月31日11時27分、回答期限は2025年2月4日でした。
実施日から今回の実施日までを数えると546日、約17.9か月です。公開日どうしなら539日になります。どちらで数えても半年ではありません。
7つの経路から崩しにいって、すべて塞がった
「実は別のAI調査が半年前にあったのではないか」という可能性を潰しました。
| 疑い | 確認したこと |
|---|---|
| 他の年に調査があるのでは | アンケート記事を全21本列挙。AI関連は2本のみ |
| 索引から消された記事があるのでは | 保存記録と現在の一覧が完全に一致 |
| グループの他媒体では | 8媒体を走査。デジカメWatchのみ該当欄があり、2026年の63本にAI関連ゼロ |
| AI専門媒体では | AI Watchの創刊は2026年4月3日。半年前に存在しない |
| 別テーマの調査にAI設問が | NISA調査を走査。「AI」の出現はすべてナビとタグで、本文にゼロ |
| 公開後に本文を直したのでは | 保存記録4時点で当該段落が一字一句同一 |
| 前回記事の日付が違うのでは | 3系統のメタ情報がすべて2025年2月14日で一致 |
代替の「前回調査」は存在しませんでした。
本記事の執筆時点、2026年8月10日に取得しても本文は「半年前」のままです。更新日時のメタ情報自体が付いていません。
設問文はグラフ画像の中にあり、本文から一部が落ちた

次に、何を聞いた調査なのかを確認します。ここで想定外のことが起きていました。
本文にあるのは設問文ではなく要約だった
結果記事の本文は、こう書き出します。
利用しているAI関連サービス(複数回答可)では、「Gemini」が80.4%で最も多く、
私はこれを設問文だと思っていました。違いました。これは編集部の要約です。
実際の設問文は、記事に貼られたグラフ画像の中にあります。
Q3. 現在利用している(または直近で利用した)AI関連サービスを教えてください。(複数選択可)
「または直近で利用した」が本文から落ちています。
この一句があると意味が変わります。今まさに使っている人だけでなく、最近1回試しただけの人も80.4%に含まれる設問だからです。本文だけを読む人には、この緩さが見えません。
Q1の設問文はChatGPTとGeminiしか例示していない
利用頻度を聞いたQ1も、設問文は画像の中にあります。
Q1. 日常や仕事で、ChatGPTやGeminiなどの生成AIサービスを使っていますか?(単一選択)
例示されているのはChatGPTとGeminiの2つだけです。Claudeもほかのサービスも挙がっていません。
回答者が最初に読む設問でこの2つが並ぶことが、後続の設問への答え方に影響しないとは言い切れません。ただし影響の有無を確かめる材料はないので、ここは指摘にとどめます。
画像の代替テキストが空になっている
もう1点あります。記事に貼られた画像3点は、いずれも代替テキストが空でした。
つまり画像を表示できない環境や読み上げ環境では、設問文にも「639 件の回答」という表示にもアクセスできません。設問文が画像の中にしかない以上、これは情報そのものが届かないという意味になります。
Q3の選択肢は19項目。本文が数字を出したのは8項目だけ

数字の中身を見ます。ここも本文と原データにずれがあります。
本文が挙げた8項目と実数の検算
本文が数字付きで挙げているのは次の8つです。グラフ画像には実数も載っているので、併記します。
| サービス | 件数 | 割合 |
|---|---|---|
| Gemini | 514 | 80.4% |
| ChatGPT | 436 | 68.2% |
| Claude | 337 | 52.7% |
| Microsoft Copilot | 180 | 28.2% |
| Gemini Notebook | 118 | 18.5% |
| Grok | 112 | 17.5% |
| Perplexity | 56 | 8.8% |
| 開発支援ツール・AIエディタ | 54 | 8.5% |
実数を639で割り直したところ、8項目すべてが掲載値と一致しました。数字そのものに誤りはありません。
グラフには19項目が載っている
一方、グラフ画像には19項目が並んでいます。本文に出てこない11項目は次のとおりです。
動画・音声生成AI 28件、Canvaの AI機能 23件、Stable Diffusion 21件、Genspark 20件、Adobe Firefly 17件、Notion AI 14件、タスク・業務自動化AIエージェント 11件、Meta AI 11件、Manus 7件、その他 30件。そして「特にない・使っていない」が12件です。
全19項目の選択総数は2001件でした。639で割ると1人あたり平均3.13項目になります。
「逆転」ではなく併用が実態に近い
ここが実務的にいちばん大事なところです。
複数回答なので、GeminiとChatGPTは同じ人が両方選べます。Geminiが514件、ChatGPTが436件で、回答は639件。単純に足すと950件で、639を311件超えます。
つまり最低でも311件は両方を選んでいる計算になります。ChatGPTを選んだ436件のうち、少なくとも71%がGeminiも選んでいることになります。
「GeminiがChatGPTに勝った」ではありません。「両方使っている人が多い」というのが、この数字が示していることです。
利用頻度は4区分。98%が利用者だった
Q1の結果は次のとおりです。本文には3つしか強調されていませんが、4つ目まで含めて並べます。
| 回答 | 件数 | 割合 |
|---|---|---|
| 毎日使っている | 502 | 78.6% |
| 週に数回程度使っている | 113 | 17.7% |
| 月に数回程度使っている | 8 | 1.3% |
| あまり使っていない・使っていない | 16 | 2.5% |
合計すると639件でぴったり一致します。回答者の約98%がAIを使っている人です。
この一点が、80.4%という数字を一般化できない最大の理由になります。AIを使う人だけが答えた集まりの中での順位だからです。
なお円グラフに数値ラベルが付いているのは78.6%と17.7%の2つだけで、残る1.3%と2.5%は図から確認できません。
料金は4区分81.9%だけ。残る18.1%は開示されていない

課金についての設問も見ておきます。ここには別の問題があります。
記事が挙げた4区分を足すと81.9%にしかならない
本文の逐語はこうです。
個人で契約しているAIサービスの1カ月あたりの合計利用料金については、有料プランを利用していない方(0円)が31.8%で最も多くなりました。ついで、1,500円以上3,500円未満が29.1%、3,500円以上6,000円未満が12.4%、10,000円以上が8.6%でした。
足してみます。31.8+29.1+12.4+8.6で81.9%です。
残る18.1%、件数にして約116件分の区分が記事に出てきません。
欠けているのは金額帯の途中にある2つ
開示された4区分の境界を並べると、抜けている帯が構造的に分かります。
0円、1,500円以上3,500円未満、3,500円以上6,000円未満、10,000円以上。「0円超〜1,500円未満」と「6,000円以上〜10,000円未満」の2つが飛んでいます。
しかも本文は金額順ではなく割合の多い順に並べているため、帯が飛んでいることが読んでいて分かりにくくなっています。
この設問にはグラフ画像がありません。読者が自分で全体を確認する手段がないということです。
料金設問は2025年に存在しなかった
補足を1つ。2025年の調査フォームには料金に関する設問がありませんでした。設問は6問だけです。
したがってこの料金データは今回が初出で、前年との比較は原理的にできません。
前回比を出せない理由。2025年は選択肢の作りが違った

前回との比較について、書けることと書けないことを分けます。
前回はChatGPT 54.4%、Gemini 42.2%
2025年2月14日の記事に載っている数字です。回答は263件でした。
| サービス | 2025年 |
|---|---|
| ChatGPT | 54.4% |
| Gemini | 42.2% |
| Microsoft Copilot | 33.8% |
| Perplexity | 24% |
| Claude | 16.3% |
単純なポイント差を引けない理由
私は当初、素直に引き算をするつもりでした。Geminiが42.2から80.4で38.2ポイント増、ChatGPTが54.4から68.2で13.8ポイント増、というように。
これは成立しません。
2025年の調査では、有料プランが別の選択肢として並んでいたからです。「ChatGPT Plus/Team」「ChatGPT Pro」「Gemini Advanced」がそれぞれ独立した項目になっていました。
つまり2025年の「ChatGPT 54.4%」は無料版だけを指している可能性があります。有料版を選んだ人が別に計上されていたなら、合算した実際の利用率はもっと高かったことになります。
ChatGPTの13.8ポイント増という数字は撤回します。実際には減っている可能性すらあります。
選択肢そのものが入れ替わっている
ほかにも違いがあります。今回は「Gemini Notebook」が新設されました。2026年7月にNotebookLMから改称された、Gemini側の新項目です。
選択肢が変われば選ばれ方も変わります。18か月あいだが空き、n が263から639へ2.4倍になり、選択肢の構成も違う。同じ人を追いかけた調査でもありません。
比較として書けるのは「前回はChatGPTが最多で、今回はGeminiが最多だった」という順位の入れ替わりまでです。何ポイント増えたという話にはできません。
Perplexityは24%から8.8%へ。減った2つに本文は触れない

前回比で、もう1つ気づいたことがあります。
増えたサービスだけが語られている
結果記事は「利用されるサービスの傾向が変化していることがうかがえます」と書いて、Geminiの首位を伝えています。
ただし変化しているのは増えた側だけではありません。2つのサービスが減っています。
| サービス | 2025年 | 2026年 | 変化 |
|---|---|---|---|
| Perplexity | 24% | 8.8% | 0.37倍 |
| Microsoft Copilot | 33.8% | 28.2% | 0.83倍 |
Perplexityは3分の1近くまで落ちています。結果記事の本文は、この減少に一切触れていません。
ただし減少の理由は、この調査からは分からない
念のため書いておきます。減っているという事実は数字から言えますが、理由はこの調査から分かりません。
同じ人を追いかけていないので、サービスの人気が落ちたのか、回答者の顔ぶれが入れ替わったのかを区別できないからです。
前回の選択肢構成が違う点も同じように効きます。増減はどちらも慎重に扱う必要があります。
他調査と並べると、ずれるのはGeminiとClaudeだけ

外の調査と突き合わせます。ここで私の見立てが1つ崩れました。
「Impressの数字は全体的に高い」は成立しない
当初は「自己選択のサンプルだから全体的に数字が高く出ているのだろう」と考えていました。
分母をそろえて比べたところ、そうではありませんでした。
| 調査 | 実施 | ChatGPT |
|---|---|---|
| Impress Watch | 2026年7〜8月 | 69.5% |
| ICT総研 | 2026年2月 | 66.2% |
| スリスタ | 2026年5月 | 60.8% |
ChatGPTは3つの調査でほぼ一致します。Impressだけが飛び抜けているわけではありません。
ずれているのはGeminiとClaudeの2つだけでした。論じるべき対象がここで絞られます。
Claudeを異常値の根拠にすると反証される
Claudeについても訂正があります。
ImpressのClaude 52.7%は、一般向け調査(7.86%)と比べると6.8倍です。当初はこれを偏りの証拠に使うつもりでした。
使えません。
GMOインターネットグループが2026年6月に実施した社内調査があります。回答5,621件、業務でのAI活用率98.7%という、Impressと似た性質の集まりです。そこでのClaudeは73.4%で首位でした。
ImpressのClaude 52.7%は、それより20ポイント低い。AIを日常的に使う人の集まりでは、Claudeが半分を超えることは珍しくないということです。
突くべきはGeminiの順位のほう
一方、Geminiが首位という結果は、ほかのどの調査でも再現されていません。
先ほどのGMO調査でも、Geminiは64.3%で3位でした。ICT総研でもスリスタでも、Geminiは首位ではありません。
世界の規模で見ても順序が合いません。2026年時点で公表されている月間利用者数は、Geminiアプリが約9.5億、ChatGPTが約10億です。Impressの調査だけが、この順序を逆にしています。
調査直前はGoogle・OpenAI・Anthropicとも大型発表が続いた

なぜGeminiが首位になったのか。ここでも見立てが1つ崩れました。
「Geminiだけが露出で有利だった」は言えない
調査期間の直前にGoogle側の発表が集中していたので、当初は「話題の直後だからGeminiが選ばれやすかった」と書こうとしていました。
並べてみたら、そう単純ではありませんでした。
| 日付 | 発表 |
|---|---|
| 7月16日 | Gemini Sparkが日本語に対応 |
| 7月17日 | NotebookLMがGemini Notebookへ改称(現地16日) |
| 7月21日 | Gemini 3.6 Flashが一般提供(現地) |
| 7月24日 | Claude Opus 5を発表 |
| 7月29日 | Gemini SparkをProユーザーへ拡大 |
| 7月31日 | 7月のGemini Drop(調査開始当日) |
Anthropicも同じ時期に最上位モデルを出しています。Claudeが16.3%から52.7%へ伸びたことと、時期が重なります。
Google側の発表が多いのは事実ですが、「Geminiだけが有利だった」とは書けません。
想起の影響は確かめる材料がない
そもそも、この種の説明は検証できません。
調査は、いつ使い始めたのか、何がきっかけだったのかを聞いていないからです。話題性が回答に影響したかどうかを判定する材料が、データの中にありません。
可能性としては指摘できますが、断定はできない。ここは正確に書いておきます。
Gemini Notebookによる水増しもない
「NotebookLMがGemini Notebookに変わったから、Geminiの数字が押し上げられたのでは」とも考えました。
これも成立しません。グラフを見ると「Gemini」と「Gemini Notebook」は別項目として集計されています。足し込まれてはいません。
ブランド名が揃ったことで回答者の印象が変わった可能性は残りますが、それを確かめる方法はありません。
GPT-5.6 Lunaの無料開放は8月6日
補足です。OpenAIが無料ユーザー向けにGPT-5.6 Lunaを既定にし、テキストチャットの上限を外したのは2026年8月6日でした。
回答期限の8月4日より後です。この変更は今回の数字に反映されていません。
読者が調査記事を読むとき確認すべき3点。分母・設問・期間

ここまでの検証から、実務に使える形を取り出します。
転載6件のうち、分母を補ったのは1件だった
なぜ読者側が確認する必要があるのか。転載のされ方を見ると分かります。
この調査を取り上げた記事を数えたところ、8月7日の公開から8日に3件、9日に3件で計6件でした。8月10日時点で新しい転載は確認できず、広がりは9日でほぼ止まっています。
このうち回答が639件であることに触れたのは1件だけでした。6件のうち1件は、見出しとリンクだけで80.4%という数値すら載せていません。
そして皮肉なことに、唯一分母を補ったその1件が、別の誤りを持ち込んでいます。「半年前の調査でChatGPTが80%台でリードしていた」と書いているのですが、前回のChatGPTは54.4%です。元記事の「半年前」を受け取ったうえで、数字のほうも取り違えたことになります。
丁寧に扱おうとした記事が、かえって誤りを増やしている。元の記事に必要な情報が書かれていないと、こうなります。
1. 分母が何人かではなく誰かを見る
今回でいえば「639件」と「回答者の98%がAI利用者」の2つです。
母数が何人かではなく、どういう人たちかを見ます。AIを使う人だけが集まった中での80.4%は、日本の80.4%ではありません。
見分け方は簡単です。募集の記事まで戻ることです。今回は募集記事に「Impress Watch読者アンケート」と書かれていました。結果記事だけを読んでいると、この語には出会えません。
2. 要約ではなく設問文そのものを探す
本文の要約ではなく、実際に何と聞いたかを確認します。
今回は本文の「利用しているAI関連サービス」に対し、実際の設問が「現在利用している(または直近で利用した)」でした。1回試しただけの人が入るかどうかで、数字の意味が変わります。
設問文が記事に見当たらないときは、グラフ画像の中を見てください。今回はそこにありました。
3. 比較の相手と間隔を確認する
「前回より増えた」と書かれていたら、前回がいつで、同じ設問だったかを見ます。
今回は本文が「半年前」と書き、実際には約1年半前でした。しかも選択肢の作りが違うため、増減をポイントで語れません。
確認は難しくありませんでした。記事が貼っているリンクの日付を見るだけです。
まとめ:Gemini 80.4%より、何の80.4%かを見る
本記事の内容を整理します。
1. 「8割がGemini」は639件の回答の内訳である
2026年7月31日から8月4日までの5日間、記事に掲載されたGoogleフォームに自主的に寄せられた回答です。日本の利用率ではありません。
2. 本文の「半年前」は誤りで、前回調査は約1年半前だった
前回は2025年1月末実施、2025年2月14日公開、263件。実施日から546日前です。記事が貼ったリンクカードに「2025年2月14日 11:45」と表示されています。
3. 設問文は本文になく、グラフ画像の中にあった
実際の設問は「現在利用している(または直近で利用した)」で、本文の要約からは「または直近で利用した」が落ちています。
4. 「逆転」ではなく「併用」が実態に近い
複数回答なので、Gemini 514件とChatGPT 436件のうち最低311件は同じ人です。ChatGPT利用者の少なくとも71%がGeminiも使っている計算になります。
5. 前回との比較はポイント差で語れない
2025年は有料プランが別選択肢だったため、ChatGPTの増加分は算出できません。Perplexityが24%から8.8%へ減っている点にも本文は触れていません。
6. 他調査とずれているのはGeminiとClaudeだけ
ChatGPTは3調査でほぼ一致します。ClaudeはGMOの社内調査で73.4%と首位になっており、Impressの52.7%はむしろ低い。再現されていないのはGeminiの首位です。
読者にとっての要点は1つです。数字の大きさではなく、それが何の中での数字かを見てください。今回は「AIを毎日使う人が8割を占める639件」の中での80.4%でした。
よくある質問(FAQ)

Q1. 日本ではGeminiがChatGPTより使われているのですか。
この調査だけでは言えません。回答はImpress Watchの記事に掲載されたGoogleフォームに自主的に寄せられた639件で、そのうち約98%がAIを利用している人です。ICT総研が2026年2月に行った調査では、AI利用経験者を母数にしてChatGPT 66.2%、Gemini 45.7%でChatGPTが上でした。GMOインターネットグループが2026年6月に行った社内調査(5,621件)でもGeminiは64.3%で3位です。Geminiが首位という結果は、ほかの調査で再現されていません。
Q2. 「Geminiが逆転」という読み方は正しいですか。
正確ではありません。設問は複数選択で、Geminiが514件、ChatGPTが436件、回答は639件です。単純に足すと950件になり、回答数を311件超えます。つまり最低311件は両方を選んでおり、ChatGPTを選んだ人の少なくとも71%がGeminiも使っている計算になります。どちらかを選んだ結果ではなく、併用している人が多いことを示す数字です。
Q3. 記事の「半年前」という記述はどう扱えばいいですか。
誤りとして扱ってください。前回のAI利用調査は2025年1月末に実施され、2025年2月14日11時45分に公開されています。実施日から数えて546日、約17.9か月前です。Impress Watchの他媒体・他コーナーも走査しましたが、2026年前半にAI利用調査は存在しませんでした。
なお、その根拠は同じ記事の中にあります。「半年前」と書かれた段落の直後に、編集部自身が前回調査へのリンクを貼っており、そこに「2025年2月14日 11:45」と表示されています。
筆者より
この記事は、書く前に2回の検証をかけています。1回目で89項目、2回目は1回目の結論そのものを崩しにいって67項目を確認しました。
崩れたものがあります。「今回だけ読者限定を外した」という見立てです。アンケート結果記事を全件数えたら、見出しに「読者調査」が付いているのは10本中1本だけでした。付けないほうが通常運用で、前回のAI調査にも付いていません。逸脱ではなかった。
もう1つ崩れました。「Impressの数字は全体的に高い」という見立てです。分母をそろえるとChatGPTは他調査とほぼ一致し、ずれているのはGeminiとClaudeだけでした。しかもClaudeは、AIを日常的に使う人の集まりなら他社調査で73.4%という例があり、むしろImpressのほうが低い。
Claudeを偏りの証拠に使っていたら、一次情報1本で反証されていました。
逆に、崩そうとして崩れなかったのが「半年前」です。7つの経路を潰しても代替の調査は出てこず、記事の中に反証が同居したままでした。
数字そのものに誤りはありません。実数を割り直しても全項目が一致しました。気になったのは、その数字が何の数字かを示す言葉のほうが、記事から抜けていたことです。
参考資料
- Impress Watch「8割がGemini利用、ChatGPTは68% AI利用調査」(2026年8月7日)
- Impress Watch「AIサービスの利用状況についてアンケートにご協力ください」募集記事(2026年7月31日)
- Impress Watch「ChatGPT利用は54%、Geminiは42% AIサービス利用調査結果発表」(2025年2月14日)
- Impress Watch 前回調査の募集記事(2025年1月31日)
- Impress Watch アンケート記事一覧(2023年・2025年・2026年の各年版)
- ICT総研「生成AIサービス利用動向に関する調査」(2026年2月)
- 株式会社スリスタ 会社員のAI利用調査(2026年5月)
- GMOインターネットグループ AI活用に関する社内調査(2026年6月)
- Google公式ブログ「Gemini Spark」日本提供の告知(2026年7月29日)
- OpenAI「Improving GPT-5.6 Sol in ChatGPT—and expanding access to GPT-5.6 Luna for free users」(2026年8月6日)
- Internet Archive Wayback Machine(当該記事の2026年8月8日・9日のスナップショット)












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