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Claudeの文章に透かしが入る。確認する手段は8月17日時点でゼロ

みなづちです。
Claudeで書いた文章に、透かしが入ります。
Anthropicが2026年8月14日に公開した記事の冒頭は、こうです。
Future Claude models will generate text that contains a watermark.
将来のClaudeモデルは、透かしを含むテキストを生成します。
目的はEU AI法への対応です。読者にとっての関心は、たぶん1つでしょう。自分がClaudeで書いた文章は、AIが書いたと分かってしまうのか。
結論から書きます。現時点では、誰も確認できません。
透かしを検出する仕組みが、まだ提供されていないからです。しかも透かし入りのモデルも、まだ1つも出ていません。
調べていくうちに、それ以外にも引っかかる点が次々に出てきました。
本記事では、以下のポイントから解説します。
- 一次情報は8月14日の記事ではなく、その4日前のサポートページだったこと
- サポートページにしか書かれていない5つの事実
- 校正では透かしが乗りにくく、翻訳には全部乗る理由
- 200トークンという数字が、検出の下限ではなかったこと
- 検出が用意されても、誰でも使えるとは限らないこと
結論:透かしはまだ入っていない。確認する手段も用意されていない

まず記事全体の結論からお伝えします。押さえておきたいのは、これが予告であって、すでに起きたことではないという点です。
現状を3つに分けます。
| 項目 | 状況 |
|---|---|
| 透かし入りのモデル | まだ存在しない |
| 検出する仕組み | まだ提供されていない |
| 適用範囲 | 全世界(地域を分ける手段がないため) |
対象は「2026年8月2日以降にローンチされたClaudeモデル」です。ところがAnthropicのモデルを並べると、Fable 5が2026年6月9日、Claude Sonnet 5が6月30日、Claude Opus 5が7月24日。すべて8月2日より前です。
8月2日以降に出たモデルは、本記事の執筆時点で1つもありません。
検出のほうも同じです。記事にはこう書かれています。
We will soon be offering a watermark detection API. We’re in the process of working out the details of its implementation.
近く検出APIを提供する予定で、実装の詳細を詰めている最中である。
時期は書かれていません。開発者向けドキュメントの全文を走査しても、それらしい記述は見つかりませんでした。
筆者の視点:後追いだと分かったが、因果は断定できなかった

この件を追う中で、見立てが二度変わりました。ここではその過程を書きます。
8月14日の記事が一次情報だと思っていた
最初に見つけたのは、Anthropicのニュース記事でした。8月14日公開で、透かしの仕組みをQ&A形式で説明しています。
これを一次情報として書き始めました。ところが報道を確認すると、日付が合いません。8月11日や12日の記事が、すでにこの件を報じているのです。
さかのぼると、別の文書がありました。Anthropicのサポートページで、更新日は2026年8月10日。ニュース記事より4日早い。
反発の記事が、あいだに挟まっていた
時系列を並べたところ、思っていた以上に細かい構造が出てきました。
| 日時(協定世界時) | 出来事 |
|---|---|
| 8月10日 19:03 | サポートページが公開される |
| 8月11日 12:13 | 米メディアが初報を出す |
| 8月12日 22:26 | 同メディアが「一部のClaude利用者が怒っている」と報じる |
| 8月13日 23:49 | ニュース記事の文書が作成される |
| 8月14日 19:16 | ニュース記事が公開される |
反発の報道から、記事の文書が作られるまで25時間23分です。
「反発を受けて出した後追いのFAQだ」と書きたくなりました。実際、退会を表明する利用者が出たという報道もあります。
因果を示す材料が公開情報になかった
ただ、そう書くには根拠が足りません。
Anthropic自身は「反発」とは一言も書いていないからです。記事の説明はこうです。
we share answers to some of the questions we’ve received
寄せられた質問のいくつかに答える。
質問が来たから答えた、という説明です。時系列は反発の直後ですが、因果を証明する材料は公開情報の中にありません。
本記事では時系列とAnthropicの説明を並べるだけにして、断定は避けます。
一次情報は8月10日のサポートページで、記事は4日後

2つの文書の関係を、もう少し確認します。
サポートページのほうが4日早かった
サポートページの更新日時は、3つの経路で一致しました。ページ内の構造化データ、内部のデータ、そしてサイトマップ。いずれも2026年8月10日19時3分20秒(協定世界時)です。
これが更新であって新規公開ではない可能性も考えました。確かめる方法があります。
Anthropicのサポートページには通し番号が振られています。ヘルプセンター全体から349件を集めて番号を比べたところ、この記事の番号が最大値でした。直近のモデル関連記事よりも新しい。
さらに、12言語版の更新時刻が19時3分20秒から19時6分20秒までの3分間に集中していました。既存記事の書き直しではなく、新規公開と翻訳の一括展開に見えます。
2つの文書は互いにリンクしていない
もう1点、気づいたことがあります。
ニュース記事の本文からリンクされているのは3つだけです。C2PAの公式サイト、EUの署名者一覧、そしてNature論文。サポートページへのリンクはありません。
逆も同じです。読者がどちらか一方にたどり着いた場合、もう一方の存在に気づく手がかりがありません。
記事は公開後に書き換えられている
ニュース記事の内部データを見ると、公開は8月14日19時16分、更新は8月15日5時53分でした。差は10時間37分です。
何が変わったのかは分かりません。保存記録のサービスが障害中で、過去版を取得できませんでした。
したがって「発表当初からこう書かれていた」とは書けません。本記事で引用する逐語は、すべて執筆時点で取得したものです。
サポートページにしかない5項目。コピペしても消えない

ここが実務的にいちばん重い部分です。
ニュース記事に載っていない語を数えた
ニュース記事の本文は12,664字あります。この全文に対して、いくつかの語を機械的に検索しました。
| 検索した語 | ニュース記事 | サポートページ |
|---|---|---|
| Article 50 | 0件 | 2件 |
| Claude Code | 0件 | 2件 |
| Cowork | 0件 | 2件 |
| AWS | 0件 | 1件 |
| model level | 0件 | 1件 |
| copied and pasted | 0件 | 1件 |
すべてサポートページにしかありません。
コピー&ペーストしても透かしは残る
なかでも重いのが、この一文です。
it will travel with the text when it’s copied and pasted elsewhere, and may persist through some editing
テキストがどこかにコピー&ペーストされても、透かしは一緒に移動する。ある程度の編集を経ても残ることがある。
Claudeの画面から別の場所に貼り付けても、透かしは付いてきます。この説明はニュース記事にありません。
製品を問わずモデルの階層で適用される
もう1つ、範囲についての記述です。
Watermarking will be applied at the model level, which means it will be present no matter which Claude product or surface the text comes from.
透かしはモデルの階層で適用されるため、どのClaude製品や画面から出たテキストであっても存在する。
サポートページは対象を具体的に挙げています。Claude Platform(API)、Claude、Claude Code、Claude Cowork、Claude Tag。そしてAWS、Google Cloud、Microsoft Foundry経由で使う場合も対象です。
ニュース記事には、製品名も経路も出てきません。
仕組みは単語選びの乱数を鍵に置き換えるSynthID-Text

技術的な中身を確認します。
どちらでもいい語の選択を利用する
Anthropicの説明は分かりやすいものです。
言語モデルは1語ずつ文章を作ります。「The weather today was cold and…」の次に来る語は、「sugary」ではまずないでしょうが、「overcast」でも「grey」でも意味はほとんど変わりません。
この、どちらでもいい選択に注目します。
通常は乱数で決めるところを、鍵と直前の数語から決めるように変える。すると選ばれた語の並びが、鍵を知っている人には見分けられるパターンになります。
Anthropicは円周率とモノポリーのたとえを使っています。サイコロの代わりに円周率の数字を順に使っても、遊んでいる側には何も変わらない。ただし後から並びを見れば、円周率を使ったかどうかは分かる、という説明です。
珍しい語を選ばせるわけではない
誤解しやすい点を、Anthropic自身が先回りして否定しています。
透かしのために「nubilous」のような珍しい同義語を選ばせることはない、と書かれています。もともと候補に入らない語を無理に使わせるわけではありません。
品質については、Google DeepMindがGeminiの一部で検証しています。約2000万件の反応を比べて、評価に統計的な差は出なかったとされています。加えて、人が並べて比較した実験でも差は見られなかったと書かれています。
どのバージョンかは公表されていない
もっとも、Anthropicが公表しているのはここまでです。
採用しているのはGoogle DeepMindが2024年のNature論文で発表したSynthID-Textの「a version of」だと書かれています。どのバージョンなのかは書かれていません。
論文には強度の段階や設定の選択肢が存在しますが、Anthropicがどれを使うのかは公表されていません。技術方式についての記述は、サポートページのほうには一切ありません。
論文にあってAnthropicの説明にない指摘が1つある

技術の話を、もう一歩だけ進めます。
同じ質問への答えが互いに似てくる
Nature論文には、Anthropicの説明に出てこない指摘があります。
同じ質問を何度か投げたときに返ってくる答えが、互いに似た方向へ寄るという現象です。論文はこれを応答間の多様性の低下として報告しています。
理由は仕組みから分かります。透かしは語の選び方を鍵に紐づけるので、同じような文脈では同じような選択が起きやすくなります。
実務での意味は現時点では限定的
とはいえ、これを大きく扱うのは適当ではありません。
論文が比較しているのは透かしなしの場合との差で、数値の大きさや実務への影響までは示されていません。Anthropicがどの設定を使うかも公表されていないので、Claudeで同じことが起きるかも分かりません。
書けるのは、論文がこの点を報告していて、Anthropicの2つの文書には出てこない、というところまでです。
校正では乗りにくく、翻訳には全部乗る。分かれ目は語数

読者がいちばん気にする部分に入ります。
透かしはClaudeが選んだ語にしか乗らない
原理はシンプルです。透かしはClaudeが選んだ語にだけ乗ります。
だから、使い方によって結果が変わります。
| 使い方 | 透かしの乗り方 |
|---|---|
| ゼロから書かせる | しっかり乗る |
| 翻訳させる | 全部乗る |
| 校正させる | 乗りにくい |
| コードを書かせる | 少ない |
翻訳には全部乗る。理由は語の選択
翻訳については、記事に明確な答えがあります。
A translation produced by Claude carries a watermark, because in this case every word is chosen by Claude.
Claudeが作った翻訳には透かしが乗る。この場合、すべての語をClaudeが選ぶからである。
翻訳は全語がClaudeの選択です。だから透かしが乗る余地が最大になります。
校正は「乗らない」とは書かれていない
私は当初、校正なら透かしは乗らないと考えていました。そう書くと言い過ぎになります。
原文はこうです。
Depending on the length of the text and how heavily Claude has edited it, those changes might not be enough to make Claude’s involvement detectable.
テキストの長さとClaudeがどれだけ手を入れたかによっては、その変更が、Claudeの関与を検出できるほどの量にならないことがある。
「乗らない」ではなく「検出に足りないことがある」です。
しかもサポートページのほうには、逆向きに読める記述があります。
People often use Claude to proofread, translate, summarize, or convert files. The output can carry a Claude mark
校正・翻訳・要約・ファイル変換にClaudeを使う人は多い。その出力にはClaudeのマークが付きうる。
ただしこの文は4つの操作をまとめて述べているので、校正だけを取り出した根拠としては弱いという点は書き添えておきます。
コードでは透かしが薄くなる理由
コードについても説明があります。
「2 + 2 =」の次に来るべき語は「4」しかありません。ジョージ・オーウェルの小説の話なら「5」です。正解が1つしかない場面では、透かしを入れる余地がありません。
コードは正確さが求められる場面が多いので、透かしは薄くなります。ただしコード内のコメントのように、語の選び方に自由がある部分には乗りうる、と書かれています。
速度は落ちる。論文の実測は0.57%の遅延増だった

細かい点ですが、記事の中で一箇所つじつまが合わない部分があります。
見出しの答えは「No」だが、本文は違う
該当の見出しはこうです。「Does this slow the model down, or make it more expensive?」(モデルが遅くなったり、高くなったりしますか)。
答えの1語目は「No.」です。ところが、その直後の文はこうなっています。
Watermarking has a negligible impact on the speed of models
透かしはモデルの速度に無視できる程度の影響を与える。
「影響がない」ではなく「無視できる程度の影響がある」です。見出しへの答えと本文がずれています。
Nature論文に0.57%という実測値
では、どのくらいなのか。Nature論文に数値がありました。
generates text at a rate of 15.527 ms per token; this increases to 15.615 ms per token with 30-layer Tournament sampling, a latency increase of only 0.57%.
1トークンあたり15.527ミリ秒だったものが、透かしを入れると15.615ミリ秒になる。遅延の増加は0.57%にとどまる。
自分で割り直しても0.567%で一致します。体感できる差ではありません。
ただし補足が要ります。これは特定のモデルを特定のハードウェアで測った値で、Claudeの実測ではありません。Anthropicは自社の数値を公表していません。
価格のほうは明確に変わらないと書かれている
料金については明確です。透かしは追加のトークンを生まないので、価格は変わりません。ここは「negligible」ではなく、はっきり「same price」と書かれています。
EU AI法の第50条2項が根拠。猶予は12月2日まで

なぜ今なのか、という話です。
根拠の条文はサポートページにある
ニュース記事は「EU AI Act」としか書いていません。条文番号はサポートページのほうにあります。
EU AI法の第50条2項です。AIが生成したコンテンツに機械可読の印を付けることを求める規定です。
Anthropicは2026年7月に、EUの行動規範に署名しています。正式名称は「Code of Practice on Transparency of AI-generated Content」で、署名は約190組織にのぼります。
署名していない大手も4社ほどある
署名者の顔ぶれも確認しました。
OpenAI、Google、Meta、Microsoft、Mistral、Cohere、Aleph Alpha は署名しています。Anthropicの「他の主要な開発者も署名している」という記述は、この点では正確です。
一方で、署名していない大手もあります。Amazon、Apple、xAI、Adobe などは一覧に見当たりませんでした。
なお約190という数はのべ数ではなく、重複を除いた組織数です。行動規範は2つの章に分かれており、両方に署名している組織が45ほどあります。単純に足すと二重に数えることになります。
8月2日は「第50条だけ」の日ではない
日付についても補足します。
2026年8月2日は、EU AI法の一般適用開始日です。第50条の透明性義務だけが動き出したわけではありません。規制サンドボックス、EUデータベース、市場監視、汎用AIへの制裁金なども同日から動いています。
延期されたのは高リスクAIの規制のほうで、これは2027年12月と2028年8月に先送りされました。
猶予の期限は2026年12月2日
既存モデルの扱いにも期限があります。
2026年7月8日付の規則(Digital Omnibus)がAI法に新しい項を加えており、2026年8月2日より前に市場に置かれた生成AIシステムに限り、第50条2項の履行が4か月猶予されます。
起算日から数えると2026年12月2日です。
Anthropicの記事は「over the coming months」としか書いていませんが、法的な期限は日付で特定できます。なお8月2日以降に出るモデルに猶予はありません。
署名しても法的な保証にはならない
もう1点。行動規範に署名しても、法律を守っていることの推定は得られません。同じ規則の前文に、行動規範の法的効果は限定的だと書かれています。
署名は「やります」という表明であって、免罪符ではないということです。
200トークンは検出の下限ではなく義務の下限だった

行動規範に、数字が1つ出てきます。
最初は検出できる下限だと思った
「200トークン」という数字を見つけたとき、私はこれを検出できる最低の文量だと考えました。200トークン未満なら透かしは見つけられない、という意味だと。
読者にとっては重要な数字になるはずです。短い文章なら安全、という話になりますから。
実際の意味は義務が生じる境目だった
確かめたところ、違いました。この数字は巻末の用語集にある「ごく短いテキスト」の定義でした。
意味はこうです。200トークン未満のごく短いテキストは、透かしを入れる義務の対象外。200トークンを超える自由形式のテキストは、信頼性が下がるとしても透かしを入れる義務がある。
義務が生じる境目であって、検出できる境目ではありません。
検出できる長さは公表されていない
では、何文字あれば検出できるのか。
公表されていません。Anthropicの2つの文書にも、Nature論文にも、閾値の数字はありません。
書かれているのは方向性だけです。小さいサンプルではうまく機能せず、長くなるほど確度が上がる。読者が自分の文章について判断できる数字は、どこにも出ていません。
なお行動規範は、この閾値について「新しい手法が出れば下がる」と留保を付けています。
検出は誰でも使えるとは限らない。行動規範に制限がある

ここが本記事でいちばん見落とされやすい部分です。
検出APIは5経路探しても見つからない
先に書いたとおり、検出APIは提供されていません。念のため5つの経路で探しました。
開発者向けドキュメントの全文(約32メガバイト)、Console、変更履歴、利用規約、地域コンプライアンスのページ。watermarkという語は28件ヒットしましたが、すべて利用状況を返すAPIの別の文脈でした。
用意されても、誰でも使えるとは限らない
そして、行動規範に気になる規定がありました。
自由形式テキストの検出については、アクセスを限定してよいと書かれています。想定されているのは、当局、法執行機関、報道機関、ファクトチェッカー、研究者、教育研究機関、市民社会といった「検証済みの専門的な利用者」です。
一般の利用者が自分の文章を確認できる保証は、どこにもありません。
理由は理解できます。誰でも検出できるようにすると、透かしを外す試行が容易になるからです。ただし読者にとっての帰結は変わりません。
利用者へ通知するという約束もない
既存モデルに透かしが後から追加されるとき、利用者に知らせるのかも確認しました。
通知の約束は0件でした。2つの文書のどちらにも、利用者へ知らせるという記述はありません。書かれているのは、記事を更新するという趣旨のことだけです。
APIでオプトアウトできるかについても、記述は見つかりませんでした。
Googleが2年3か月先行。テキストの本番投入は1社だけ

他社の状況も確認しました。ここで見立てが1つ崩れました。
Googleがすでに動かしている
Anthropicが採用するSynthID-Textは、そもそもGoogle DeepMindの技術です。
Googleは2024年5月14日に、Geminiのアプリとウェブ版のテキストへ適用を始めています。同年10月のNature論文が、その稼働を追認する形になりました。
Anthropicが実装を予告したのが2026年8月10日ですから、先行差は2年3か月です。しかもAnthropicはまだ実装していないので、差はこれ以上に開きます。
ただしGoogleも全面適用ではない
公平のために書いておきます。GoogleがSynthID-Textを適用しているのは、Geminiのアプリとウェブ版のテキストだけです。Gemini APIの出力には適用されていません。
「2社目」と言い切れるかを検討する
Anthropicは記事にこう書いています。
Other major model developers have signed the same Code of Practice and will be implementing their own watermarks.
他の主要な開発者も同じ行動規範に署名しており、それぞれの透かしを実装する予定である。
確かめたところ、署名は事実ですが、テキスト透かしの実装を表明している社は見当たりませんでした。署名と実装は別の話です。
OpenAIについては、2026年8月ごろにヘルプ記事を更新し、来歴の signal をテキストを含む全モダリティへ広げることを目標として挙げています。ただし時期も方式も書かれていません。
したがって本記事では、こう書きます。生成時にテキスト自体へ統計的な透かしを埋め込む方式を本番投入しているのは、執筆時点でもGoogle1社だけ。Anthropicはそれに続くと公表した段階です。
中国が2025年9月に義務化していた
もう1つ、見落としていた事実があります。
「テキストにまで踏み込んだのはEUだけ」と書こうとしていました。成り立ちません。中国が2025年9月1日施行の規則で、AI生成コンテンツの表示をすでに義務づけています。
ただし性格は違います。中国が求めるのは目に見える表示とファイルのメタデータで、語の並びそのものに統計的に埋め込む方式を実質的に求めているのはEUのほうです。
日本語版のヘルプは1分34秒後に出たが、誤訳がある

日本の読者にとっての条件を確認します。
日本語で読める一次情報はサポートページ
まず良い知らせです。サポートページには公式の日本語版があります。
更新時刻を比べると、英語版が19時3分20秒、日本語版が19時4分54秒。差は1分34秒です。翻訳が遅れているということはありません。
一方、8月14日のニュース記事には日本語版がありません。日本語のURLを試しても表示されませんでした。
日本語版で訳に気をつけたい箇所
ただし、日本語版には注意が必要です。英語版と読み比べたところ、意味がずれている箇所が複数ありました。
たとえば「Claude」が「クラウド」と訳されている箇所があります。cloudではなくClaudeです。ほかに、モデルの「launched(提供開始された)」を「起動」と訳している箇所もありました。
機械翻訳かどうかは断定できません。それを示す情報が公開されていないからです。ただ、重要な箇所は英語版と突き合わせたほうが安全です。
英語版のサポートページにも揺れがある
なお、英語版のサポートページにも内部で不揃いな部分があります。冒頭の箇条書きでは対象が「in the EU」と限定されているのに、他の箇所では地域の限定がありません。
適用が全世界であることはニュース記事のほうに書かれています。
We’re applying watermarking globally at launch because we don’t yet have a durable way to scope it by region.
地域ごとに範囲を分ける確実な方法がまだないため、開始時点では全世界に適用する。
EU向けの対応ですが、日本も対象です。
読者が今日できること。8月2日以降のモデルはまだない

実務の話をまとめます。
まず前提となる3点を押さえておく
1. 透かし入りのモデルはまだ存在しません。Anthropicの直近のモデルはすべて2026年8月2日より前に出ています。
2. 検出する手段もありません。APIは準備中で、時期は公表されていません。
3. 今の出力に透かしが入っているかは確認できません。入っていないと考えるのが自然ですが、確かめる方法がない以上、断定もできません。
使い方で結果が変わることを知っておく
将来を見据えるなら、押さえておくべきはClaudeが語を選んだ量です。
ゼロから書かせれば乗ります。翻訳させれば全部乗ります。校正だけなら乗りにくい。コードは薄い。この順序は原理から導けるので、実装後も変わらないはずです。
消したいなら全部書き直すしかない
透かしを外す方法についても書かれています。
a complete rewrite where every word is replaced will
すべての語を置き換える完全な書き直しであれば消える。
条件は「すべての語」です。軽い編集では「probably」完全には消えない、と留保付きで書かれています。
そしてAnthropicは、その先まで書いています。全語を置き換えたなら、それをAI生成と呼べるのかどうかは議論の余地がある、と。
透かしがあっても、それだけでは何も決まらない
最後に、いちばん誤解されやすい点です。
A watermark can only determine that Claude was likely involved with the content at some point. It cannot distinguish “Claude wrote this” from “Claude heavily edited this.”
透かしが決められるのは、Claudeがそのコンテンツに何らかの形で関与した可能性が高い、ということだけである。「Claudeが書いた」のか「Claudeが大幅に編集した」のかを区別することはできない。
人が書いた証明にもなりませんし、著者が誰かも決まりません。所有権や法的責任も変わらないと明記されています。
まとめ:Claudeの透かしで確定していること、していないこと
本記事の内容を整理します。
1. 一次情報は8月10日のサポートページで、記事は4日後
サポートページには条文番号、対象製品、クラウド経由の扱い、コピー&ペースト後も残ることが書かれています。ニュース記事にはいずれもありません。
2. 透かし入りのモデルはまだ存在しない
対象は2026年8月2日以降にローンチされたモデルですが、Anthropicの直近3モデルはすべてそれより前です。
3. 検出する手段もない
APIは準備中で時期は非公表。しかもEUの行動規範は、自由形式テキストの検出について、当局や研究者などに限定してよいと定めています。
4. 校正では乗りにくく、翻訳には全部乗る
透かしはClaudeが選んだ語にだけ乗ります。ただし校正について「乗らない」とは書かれておらず、「検出に足りないことがある」という条件付きの表現です。
5. 200トークンは検出の下限ではない
義務が生じる境目です。200トークン未満は対象外、超えたら信頼性が下がっても入れる義務があります。検出できる長さは公表されていません。
6. Googleが2年3か月先行している
テキストに統計的な透かしを本番投入しているのは、執筆時点でもGoogle1社だけです。ただしGeminiのアプリとウェブ版に限られます。
読者にとっての要点は1つです。今できることは、確かめることではなく、使い方を知っておくことだけです。ゼロから書かせるのか、翻訳させるのか、校正だけ頼むのか。透かしが乗る量は、そこで決まります。
よくある質問(FAQ)

Q1. 今Claudeで書いた文章に透かしは入っていますか。
入っていない可能性が高いですが、確かめる方法はありません。Anthropicの記事は「Future Claude models will generate text that contains a watermark.」と将来形で書いており、対象は2026年8月2日以降にローンチされたモデルとされています。Anthropicの直近のモデルはFable 5が2026年6月9日、Claude Sonnet 5が6月30日、Claude Opus 5が7月24日で、すべて8月2日より前です。既存モデルにも今後追加される予定ですが、時期は公表されていません。検出APIも未提供のため、利用者が自分で確認する手段は執筆時点で存在しません。
Q2. 校正だけ頼んだ文章にも透かしは入りますか。
入りにくいですが、入らないとは書かれていません。透かしはClaudeが選んだ語にだけ乗るため、ほとんどの語が本人のものである校正では、乗る余地がほとんどありません。原文は「Depending on the length of the text and how heavily Claude has edited it, those changes might not be enough to make Claude’s involvement detectable.」で、検出に足りないことがある、という条件付きの表現です。一方、翻訳はすべての語をClaudeが選ぶため透かしが乗ると明記されています。
Q3. 透かしがあると、AIで書いたと証明されてしまいますか。
されません。Anthropicは「A watermark can only determine that Claude was likely involved with the content at some point.」と書いており、分かるのはClaudeが関与した可能性が高いということだけです。「Claudeが書いた」のか「Claudeが大幅に編集した」のかも区別できません。また、透かしに個人や組織を特定する情報は含まれず、誰のアカウントの出力かを知ることはできないと明記されています。所有権や法的責任も変わりません。
筆者より
この記事は、書く前に2回の検証をかけています。1回目で104項目、2回目は1回目の結論そのものを崩しにいって90項目を確認しました。2回目では14件が反証されました。
いちばん大きく崩れたのは「200トークン」の意味です。検出できる最低文量だと思っていましたが、実際は義務が生じる境目でした。そのまま書いていたら「200文字以下なら安全」という、逆の話を読者に伝えるところでした。
「テキストにまで踏み込んだのはEUだけ」という枠も崩れました。中国が1年前に義務化しています。
もう1つ、書きたくて書けなかったものがあります。「反発を受けて出した後追いのFAQ」という見立てです。時系列はぴたりと合いますが、Anthropic自身は「寄せられた質問に答える」としか書いていません。因果を示す材料が公開情報の中にないので、時系列だけを並べました。
いちばん引っかかったのは、2つの文書が互いにリンクしていないことです。条文番号もコピー&ペースト後も残るという説明も、片方にしかありません。どちらか一方にたどり着いた読者は、もう一方の存在に気づけません。
参考資料
- Anthropic「How Claude’s text watermark works」(2026年8月14日公開)
- Anthropic サポートページ「How Claude marks AI-generated content」(2026年8月10日更新)
- 同 日本語版「Claudeがどのようにして生成AIコンテンツをマークするか」
- Anthropic ニュース一覧(モデルの公開日確認)
- Anthropic 開発者向けドキュメント(検出APIの有無を確認)
- Google DeepMind「Scalable watermarking for identifying large language model outputs」Nature(2024年)
- Google DeepMind 公式ブログ(SynthID-Text の Gemini への適用)
- 欧州委員会「Code of Practice on Transparency of AI-generated Content」および署名者一覧
- EUR-Lex EU AI法(Regulation (EU) 2024/1689)第50条
- EUR-Lex Regulation (EU) 2026/1744(2026年7月8日、いわゆる Digital Omnibus)
- OpenAI ヘルプセンター(来歴に関する記述)
- 中国「人工智能生成合成内容标识办法」(2025年9月1日施行)
- TechCrunch(2026年8月11日・8月12日・8月15日の各記事)
- gihyo.jp(2026年8月12日)
- マイナビニュース(2026年8月12日)












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