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みなづち
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ゲイ×強迫性障害のぼく。そんなぼくのネットだから言える本音をゆるっと発信。現実世界では隠して生息してるけどネットではさらけ出している。ゲイを自覚して20年。強迫性障害を発症して15年。
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AIが演じた「医師」のサプリ、日本を含む80か国へ。回収と訴訟の顛末

AIが演じた「医師」のサプリ、日本を含む80か国へ。回収と訴訟の顛末
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みなづちです。

SNSで、自分と同じ年代の人がサプリを絶賛している動画を見かけることがあります。白衣を着た「医師」が効能を説明する動画もあります。

2026年7月30日、米国の調査報道メディア404 Mediaが、そうした動画をAIで量産していたとされる仕組みを報じました。訴訟で争われている案件です。

そして、その動画で売られていたサプリは、治療に使う抗菌薬がほぼ効かないサルモネラ菌で回収されていました。FDAが確認した販売先には、日本が含まれています。

本記事では、以下のポイントから解説します。

  • 2026年2月13日にCDC・FDAが公表した多州アウトブレイクと、回収の中身
  • 販売先に日本が含まれていたこと。約80か国に広がっていた流通
  • その4日後に競合企業が起こし、現在も係争中の訴訟
  • 訴訟で主張されている手法と、被告側の反論
  • 日本のTikTok Shopでも、生成AI動画の問題がすでに報じられていること
  • 景品表示法が規制するのは広告主だけ、という日本の設計
目次

結論:規制も企業も動いた。それでも同じ手法は止まっていない

AIが演じた「医師」のサプリ、日本を含む80か国へ。回収と訴訟の顛末

まず記事全体の結論からお伝えします。この件は「悪質な業者が隠れて荒稼ぎしていた」という話ではありません。

制度は一応、動いています。2026年2月13日にCDC・FDAと複数州が多州アウトブレイク調査を公表し、販売元は回収に応じました。同社は自社サイトに専用のリコール告知ページを設けており、対象ロットも被害者数も公開しています。

そして4日後、競合するサプリ企業が民事訴訟を起こしました。この訴訟は現在も係争中で、被告側は全面的に争っています。

それでも、AIアバターと合成音声で体験談動画を量産するという手法そのものは止まっていません。404 Mediaが報じたのは、その手法が組織的に運用されているとされる実態です。

日本の読者にとって重要なのは、回収対象品の販売先に日本が含まれていたことと、同じ手法がすでに日本のTikTok Shopでも問題として報じられていることです。

筆者の視点:訴訟の「主張」と確定した事実を、分けて読む必要があった

AIが演じた「医師」のサプリ、日本を含む80か国へ。回収と訴訟の顛末

この件を読み解くうえで、自分がつまずいた点があります。ここではその話を書きます。

報道の中心が「訴訟で主張されていること」だと気づくのに時間がかかった

404 Mediaの記事を最初に読んだとき、AI生成の「医師」も、非公開Discordでの指導も、確定した事実として頭に入ってきました。

読み直して気づいたのは、それらの多くが訴訟の「alleges(主張している)」として書かれていることです。原告が訴状で主張し、被告が争っている段階の話でした。

実在の企業と個人が名指しされている以上、ここを混ぜて書くわけにはいきません。何が公的記録で、何が一方当事者の主張なのかを分ける作業が、この件では特に重要だと感じました。

「隠している」と決めつけかけた自分に気づいた

もう一つ反省があります。販売元のサイトを見たとき、リコールに触れていないと思い込みかけました。

実際には専用のリコール告知ページが用意されていて、対象48ロット、発症7名、入院3名、販売経路としてTikTok Shopまで明記されています。サイト内検索でも出てきます。

構図が「悪い企業が隠している」だと分かりやすい。だからそう読みたくなる。分かりやすい構図に寄せたくなる力が、自分にも働いていました。

2026年2月13日、CDC・FDAが多州アウトブレイクを公表した

AIが演じた「医師」のサプリ、日本を含む80か国へ。回収と訴訟の顛末

まず、公的記録として確定している部分から確認します。

第一選択薬も代替薬も効かない株だった

ワシントン州保健局の公式ページによれば、CDC・FDAおよび複数州の公衆衛生当局が、Rosabellaブランドのモリンガパウダーカプセルに関連する多州のサルモネラ感染アウトブレイクを調査しました。公表は2026年2月13日です。

問題は菌の性質でした。同局によれば、この株はサルモネラ症の治療に通常推奨される第一選択薬および代替薬のすべてに耐性を持ちます。

さらに、このうちサルモネラ・ニューポート(Salmonella Newport)株については、NDM-1カルバペネマーゼ遺伝子を持つため、メロペネムを含む複数のβラクタム系・カルバペネム系にも耐性の可能性があるとされました。カルバペネム系は、他の抗菌薬が効かないときに使う薬です。

なお、もう一方のサルモネラ・ケンタッキー株がNDM-1を持つかどうかを示す一次情報は確認できませんでした。両株が持つかのように読める書き方は避けます。

7州で発症、3人が入院した

被害の規模も公表されています。当初の発表では7州で7人が発症し、3人が入院、死亡者はゼロでした。最終的にはサルモネラ・ケンタッキー2件とサルモネラ・ニューポート8件の計10件です。

アウトブレイクは2026年4月1日に終息が宣言されました。

販売元は自社サイトにリコール告知ページを設けている

そして、ここは正確に書いておく必要があります。

販売元のサイトには専用のリコール告知ページが実在します。見出しは「Rosabella Moringa Capsules – Recall Notice」で、冒頭には「ニューヨーク州のAmbrosia Brands, LLCが、サルモネラ汚染の可能性を理由に、Rosabella Moringa Capsules(60カウントボトル)の特定ロットを自主回収します」とあります。

同ページには対象48ロット(使用期限2027年3月〜11月)、FDAが報告した「全米で発症7名、入院3名」、販売経路として自社サイトとTikTok Shop、および非正規の第三者流通の可能性としてeBay・Sheinが記載されています。

米国のこの種の回収は、行政が命令するのではなく企業の自主回収をFDAが公表する形式です。「FDAがリコールした」と訳すと行政処分に読めますが、正確ではありません。

販売先に日本が含まれていた。FDAが確認した約80か国

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日本の読者にとって、ここがもっとも直接的に関わる部分です。

「全米向け」ではなく国際的に販売されていた

当初、この件は米国内の話だと理解していました。しかしFDAのアウトブレイクページは「回収対象品は全米および国際的に販売された」と記載しています

そしてFDAは、日本を含む約80か国への販売を確認しています。販売元のリコール告知ページも、対象製品が英国・カナダ・オーストラリアを含む80か国以上で販売されたとしています。

つまりこれは、遠い国の出来事ではありませんでした。

販売経路にTikTok Shopが公的文書で名指しされた

流通の中身も記録に残っています。ワシントン州保健局によれば、回収対象品は自社サイト、Amazon、TikTok Shop、Shein、eBay、およびFacebookを含むSNS上のリンクで販売されていました。

SNSの物販が、集団食中毒の流通経路として行政文書に載ったということです。

なお販売元のリコール告知は、対象ロットについて「当社としてAmazonでは販売していない」とし、eBay・Sheinは無許可の第三者流通の可能性としています。当事者の説明として併記しておきます。

現在も同ブランドは営業している

販売元のサイトは2026年7月31日時点で稼働しています。トップページのショップ一覧ではモリンガパウダーカプセルを34.99ドル(定価49.99ドル、1ドル160円換算で約5,600円)と表示しています。

ただし同じサイトの商品ページでは30日分39.95ドルなど別の価格体系が併存しており、表示に不整合があります。また現在販売されている製品が回収対象ロットと同一かどうかは確認できていません。

サイトは全編英語で日本語対応はありません。国・地域のセレクタにはJapan(JPY ¥)が含まれ、配送ポリシーにも国際配送を前提とした関税負担の記載がありますが、日本向けの送料や配送日数までは明記されていません。

その4日後、競合サプリ企業が提訴した。訴訟は現在も係争中

AIが演じた「医師」のサプリ、日本を含む80か国へ。回収と訴訟の顛末

ここからは、公的記録ではなく訴訟の話になります。

提訴は2026年2月17日

404 Mediaによれば、競合するサプリ企業のHumann(Human Power of N Company)が、Ambrosia Brands LLCを提訴しました。提訴は2026年2月17日です。

つまり規制当局の措置が先で、提訴はその4日後でした。順序は逆ではありません。

ただし、AI生成の医師を使った広告手法そのものに対して、FDAやFTCが個別の執行措置を取った形跡は確認できませんでした。製品の安全性については当局が動いたが、広告手法については動いていないという整理になります。

訴状の主張と、原告代理人の言葉

訴状(2026年6月4日提出の修正訴状)では、TikTok投稿に登場する「医師」の全部またはほぼ全部がAI生成の架空の人物であり、多数の投稿が生成AIによって作られていると主張されています。

なお訴状の本文に「数百本」にあたる表現はありません。一貫して「多数の(numerous)」という書き方です。

そして、しばしば引用される「まさにSNSインフルエンサーの軍隊」という表現は、訴状の文言ではありません。原告側が被告の却下申立てに反論した書面(2026年7月20日提出)にあるもので、原文は次のとおりです。

「このキャンペーンを広めるため、Ambrosiaは、まさにSNSインフルエンサーの軍隊を、勧誘し、報酬を払い、訓練し、指導し、指示している」

主語はAmbrosiaで、能動態です。インフルエンサー側が「〜された」という受け身ではありません。

Humann側代理人でPirkey Barber PLLCの弁護士Daniel S. Martens氏は、404 Mediaの取材に対し、Rosabellaの手法は「サプリ業界全体の印象を悪くする」と述べています。同氏は「医師になりすまして、存在しない効能がいかに有望かを消費者に語っているなら、それは有害だ」とも語りました。

被告側は全面的に争っている

一方の当事者の主張だけを載せるわけにはいきません。

Ambrosia側は却下を申し立てており、404 Mediaは同社の反論を引用しています。「Humannは、Ambrosiaが、問題としている第三者の行為を誘発し、あるいは実質的に寄与したと合理的に示す事実を、何ら主張できていない」

この訴訟は現在も係争中です。以下で紹介する手法は、いずれも訴訟で主張されている内容であり、裁判所が認定した事実ではありません。

訴訟が主張する手法:AI生成の「医師」と非公開Discord

AIが演じた「医師」のサプリ、日本を含む80か国へ。回収と訴訟の顛末

その前提のうえで、何が主張されているのかを見ていきます。

「医師」は架空の人物だと主張されている

訴状の中心的な主張は、TikTok投稿に登場する「医師」がAI生成の架空の人物である、というものです。投稿は、医師や医療専門家などの医療権威が製品の健康効果を称揚しているかのように見せかけている、と主張されています。

404 Mediaが確認した動画には、AIで生成された「医師」が黒人女性に向けて痩せるための食べ物を語るものがありました。

非公開のDiscordチャンネルでの指導

訴訟はまた、Ambrosiaが自社ブランドRosabellaの名で、非公開のDiscordチャンネルを通じて、AI生成のTikTok広告の作り方をクリエイターに広範に指導したと主張しています。

これも訴訟の主張であり、404 Mediaが独自に検証した事実として書かれているわけではありません。

「1日10本」と書かれた求人票

一方、文書として確認されているものもあります。

404 Mediaは、Washenko氏が創業者として名を連ねるMNY Ventures社のLinkedIn求人票を引用しています。そこには「1日10本の高品質AI動画を、既定の台本とスタイルに従って制作する」という趣旨の記載がありました。

なおAmbrosia Brands、Rosabella、MNY Venturesの関係について、404 Mediaは「親会社」という語をどこにも使っていません。訴訟の紹介では「AmbrosiaがRosabellaを通じて」とされ、MNY Venturesについては求人文の表現を引くにとどまります。米国特許商標庁で確認できるのは、商標「ROSABELLA」の権利者がAmbrosia Brands, LLCであることです。

アフィリエイト側のYouTuberが実演した制作手順

AIが演じた「医師」のサプリ、日本を含む80か国へ。回収と訴訟の顛末

訴訟とは別に、404 Mediaが直接確認しているものがあります。手法を実演して見せていたYouTuberの動画です。

「50歳に売りたいならアバターも50歳にしろ」

英語圏の情報発信者Harry Chang氏の発言が、この手法の設計思想を端的に表しています。「50歳に健康商品を売りたいなら、アバターも50歳にしろ」

高齢者向けの健康分野を狙う理由を説明する文脈での発言です。同氏はニュージーランド出身で、自身の動画タイトルに「This AI TikTok Shop Video Made Me $67,420」(約1,080万円)と掲げていました。

ただしこの金額は本人が動画タイトルに書いた自己申告で、404 Mediaも第三者検証はしていません。

使われたのは、日本語版もある汎用ツールだった

404 Mediaは、Chang氏が実演した制作手順として4つのツールを名指ししています。動画生成のGoogle VEO 3、アバターのHeyGen、音声のElevenLabs、編集のCapCutです。

HeyGen・ElevenLabs・CapCutの3つは2026年7月時点でも一般提供されており、いずれも日本語版サイトがあります。無料プランを用意しているものもあります。

なおGoogle VEO 3は取材当時のモデル名で、現在は後継モデルに置き換わっています。

本記事は手順を書きません。ただ、特別な技術も高額な初期投資も要らないという事実は、この問題の広がりやすさを理解するうえで欠かせません。

取材を申し込んだ後、複数の動画が削除された

404 Mediaは、コメントを求めた後に記事で言及した複数のYouTube動画が削除されたと明記しています。削除された例として、月5万1000ドルの利益を掲げた動画と、クリエイターの集まりを撮った動画が挙げられています。

404 Mediaの取材に対し、Washenko氏とAmbrosia Brandsは回答しませんでした。RosabellaからはEmmanuel Obonga氏を名乗る人物が返信し、内容は「現在アクティブなアフィリエイトプログラムはありません。ただ、いただいた情報は保管し、将来再検討または開始する際にはご連絡します」というものでした。指摘された疑惑そのものには答えていない定型的な返信です。

日本のTikTok Shopでも、生成AI動画の問題はすでに報じられている

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では日本ではどうか。ここは調べてみて認識を改めた部分です。

産経新聞が7月28日に報じていた

当初、日本での実例はまだ出ていないと考えていました。しかし産経新聞が2026年7月28日、「ネット通販『TikTok Shop』日本1周年 コメが想定外の人気、AI動画で問題も」という記事を配信しています

同記事は、生成AIを活用した販売促進動画をめぐり、実際の商品と異なる動画が生成されるといった新たな問題が発生していると報じています。

米国の話が日本に来るかもしれない、という段階ではありません。すでに起きています。

TikTok Shopの日本提供は2025年6月30日から

TikTok公式ニュースルームによれば、TikTok Shopの日本での提供開始は2025年6月30日です。同時に、クリエイターとセラーを成果報酬でつなぐアフィリエイトプログラムも始まりました。

動画で商品を紹介し、売れたら報酬が入る。米国で使われたのと同じ仕組みが、日本にも用意されています。

TikTokはAI生成コンテンツへのラベル付けを求めている

プラットフォーム側のルールについても確認しました。

TikTokの公式ヘルプページとコミュニティガイドラインの該当本文は、JavaScriptで描画されるため直接取得できませんでした。ただしTikTok公式ニュースルームは、現実的なAI生成コンテンツについてクリエイター自身によるラベル付けを1年以上前から義務付けていること、同社のAIエフェクトで作成したコンテンツには自動でラベルが付くことを説明しています。

ラベルの有無にかかわらず、有害な誤解を招くAI生成コンテンツは削除対象としています。

ただし今回のケースで実際にどう運用されたのか、TikTok社が何らかの措置を取ったのかは公表されていません。404 Mediaの記事にも同社のコメントはありません。

景品表示法が規制するのは、広告主だけという設計

AIが演じた「医師」のサプリ、日本を含む80か国へ。回収と訴訟の顛末

日本の制度に照らすと、もう一つ見えてくる論点があります。

消費者庁は「インフルエンサーは対象とならない」と明記している

ステルスマーケティング規制(景品表示法の指定告示)は2023年10月1日に施行されました。広告なのに広告と分からない表示を禁じるものです。

消費者庁は「規制の対象となるのは、商品・サービスを供給する事業者(広告主)です」と明記しています。依頼を受けたインフルエンサー等の第三者は、この法律の規制対象にはなりません。

ただし「何の責任も負わない」という意味ではない

ここは正確に書く必要があります。

これは景品表示法上の規制対象の話であって、インフルエンサー側が薬機法(誇大広告の禁止)や健康増進法、あるいは民事上の責任を免れるという意味ではありません。他の法令による責任は、この規定によって否定されるものではないと理解すべきです。

責任主体が海外事業者だと、執行が届きにくい

そのうえで、今回のような構図には実務上の難しさがあります。

景品表示法で責任を負うのは広告主です。今回のケースで言えば、それは米国の事業者にあたります。海外事業者に日本の景品表示法を執行するのは、実務上きわめて困難です。

なお消費者庁が2026年度に公表した措置命令・執行状況を確認した範囲では、AI生成コンテンツやTikTokを理由とする摘発事例は見当たりませんでした。

制度は動いた。それでも手法は残っている

AIが演じた「医師」のサプリ、日本を含む80か国へ。回収と訴訟の顛末

ここまでを整理すると、この件は単純な善悪の物語ではありません。

規制当局は動きました。2026年2月13日にアウトブレイクを公表し、回収が始まりました。企業も自社サイトにリコール告知ページを設け、対象ロットと被害者数を公開しています。競合企業は民事訴訟を起こし、被告は全面的に争っています。それぞれの主体が、それぞれの立場で動いています。

それでも、AIアバターと合成音声で体験談動画を量産するという手法自体は残りました。使われているツールは正規のサービスで、悪用のために作られたものではありません。日本語版もあり、無料で始められるものもあります。

そして販売先には日本が含まれていて、日本のTikTok Shopでも生成AI動画の問題はすでに報じられています。

止める主体がいないのではなく、止めても手法が残る。それが今回の構図だと思います。製品の安全性については当局が動きましたが、AI生成の「医師」という広告手法そのものに対する個別の執行措置は、確認できませんでした。

だからこそ、見る側の基準を更新しておく価値があります。うまくできているほど疑う、という基準は、属性を狙って設計されたものに対しては実際に有効だからです。

まとめ:この件で確定していることと、まだ争われていること

2026年7月30日に404 Mediaが報じたこの一件について、押さえておきたい点を整理します。

  • 公的記録として確定していること。2026年2月13日にCDC・FDAと複数州が多州アウトブレイクを公表し、Rosabellaブランドのモリンガパウダーカプセルが自主回収の対象になった。第一選択薬も代替薬も効かず、ニューポート株はカルバペネム系まで効かない可能性があった。7州で7人が発症し3人が入院。販売経路にTikTok Shopが明記され、FDAは日本を含む約80か国への販売を確認している
  • 訴訟で主張されているが、まだ争われていること。AI生成の「医師」による効能の誇張、非公開Discordでのクリエイター指導。提訴は回収公表の4日後の2026年2月17日で、被告Ambrosia側は「誘発した事実を何ら主張できていない」として全面的に争っている
  • 日本ですでに起きていること。TikTok Shopの日本提供は2025年6月30日。生成AIを使った販促動画で実際の商品と異なる動画が生成される問題が、2026年7月28日に産経新聞で報じられている

そのうえで、SNSの体験談動画を見るときに確認したいことが3つあります。

  1. その人物の他の投稿に、時間的な連続性があるか。その商品の宣伝だけに現れた人物ではないか
  2. AI生成であることのラベルがあるか。TikTokはクリエイター自身によるラベル付けを求めているが、表示がないことが本物の証明にはならない
  3. 販売元が国内事業者か海外事業者か。海外事業者の場合、日本の景品表示法による対応は期待しにくい

自分と同じ属性の人が、自分と同じ悩みを語っている。その一致が心地よいときこそ、いったん立ち止まる。今回の件が示しているのは、そういう習慣の必要性だと思います。

よくある質問(FAQ)

AIが演じた「医師」のサプリ、日本を含む80か国へ。回収と訴訟の顛末

Q1. 日本でもこの商品は売られていたのですか?

A. FDAは回収対象品が全米および国際的に販売されたとしており、日本を含む約80か国への販売を確認しています。販売元のリコール告知ページも、英国・カナダ・オーストラリアを含む80か国以上で販売されたとしています。回収対象は使用期限2027年3月〜11月の48ロットです。現在同社サイトは稼働していますが、全編英語で日本語対応はなく、現在販売中の製品が回収対象ロットと同一かどうかは確認できていません。

Q2. AI生成の「医師」が効能を語っていたというのは、確定した事実ですか?

A. いいえ、訴訟で主張されている内容です。競合するサプリ企業が2026年2月17日に提訴し、訴状は「TikTok投稿に登場する『医師』の全部またはほぼ全部がAI生成の架空の人物である」と主張しています。ただし被告のAmbrosia Brandsは却下を申し立てており、「原告は、被告が第三者の行為を誘発したと合理的に示す事実を何ら主張できていない」と反論しています。訴訟は現在も係争中で、裁判所が認定した事実ではありません。

Q3. 日本でも同じことが起きているのですか?

A. すでに報じられています。産経新聞は2026年7月28日、TikTok Shopの日本提供1周年に関する記事で、生成AIを活用した販促動画をめぐり実際の商品と異なる動画が生成されるといった問題が発生していると報じました。ただしAIアバターによる体験談広告に特化した個別の事例報道は確認できず、消費者庁が2026年度に公表した措置命令・執行状況を確認した範囲でも、AI生成コンテンツやTikTokを理由とする摘発事例は見当たりませんでした。

筆者より

この記事は、一度ほぼ書き上げてから全面的に書き直しました。

最初の原稿では「規制当局より先に、損をした競合が訴えた」と書いていました。構図として面白いと思ったからです。確かめてみると、当局は4日前に動いていました。順序が逆でした。

販売元のサイトについても「リコールへの言及は一切ない」と書きかけました。実際には専用の告知ページがあり、被害者数まで公開されていました。

どちらも、調べれば数分で分かることです。分かりやすい構図に寄せたくなる力が、書き手の側に働いていたのだと思います。AI生成の体験談動画が「信じやすい形」に最適化されているのと、根っこは同じかもしれません。

事実関係の誤りや、日本での事例をご存じの方がいらっしゃいましたら、コメント欄で教えてください。

参考資料

  • 404 Media「Inside an AI TikTok Shop Slop Factory That Shills Supplements Recalled By the FDA」(Jason Koebler/2026年7月30日)
  • ワシントン州保健局 公式アウトブレイク情報ページ(Rosabellaブランド モリンガパウダーカプセル・多州アウトブレイク調査)
  • FDA アウトブレイク調査ページ(販売範囲・約80か国への販売の確認)
  • tryrosabella.com 公式リコール告知ページ(対象48ロット・発症7名・入院3名)
  • Humann対Ambrosia Brands 修正訴状(2026年6月4日提出)および原告側反論書面(2026年7月20日提出)
  • 産経新聞「ネット通販『TikTok Shop』日本1周年 コメが想定外の人気、AI動画で問題も」(2026年7月28日)
  • TikTok 公式ニュースルーム(TikTok Shop日本提供開始・AI生成コンテンツのラベル付け方針)
  • 消費者庁 ステルスマーケティング規制の解説ページおよび2026年度の執行状況
  • 米国特許商標庁(USPTO)商標データベース(ROSABELLA の権利者確認)
  • HeyGen・ElevenLabs・CapCut 各公式サイト(日本語版・提供状況の確認)

※円換算は1ドル160円で計算した概算です(2026年7月31日のドル円は約160円)。
※本記事はAI生成コンテンツの構造と見分け方を扱うもので、制作手順は記載していません。
※訴訟に関する記述は、いずれも係争中の主張であり、裁判所が認定した事実ではありません。
※本記事は執筆時点(2026年7月31日)の情報です。最新情報は各機関の公式発表をご確認ください。
※本記事について、事実関係の誤りや最新情報の追加などお気づきの点がございましたら、ぜひコメント欄でお知らせください。

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